日本には、すべての串焼き、すべてのビール、すべてのメニューが360円という魔法のような場所が存在します。
その名もトリキ族。もし天国が焼き鳥居酒屋を開いたら、たぶんこうなる、という奇跡のチェーンです。
トリキ族はチェーン店ですが、いわゆる「ザ・チェーン店」みたいな悲しみはありません。
扉を開けた瞬間、元気なおじさんたちが集まってニヤニヤしながら鶏を焼いているような、そんな温かさに包まれます。
まずは香り。あの香りだけで、一生ベジタリアンを貫くと決めていた人をぐらつかせる破壊力があります。
メニューを開くと、まあ鶏、鶏、鶏、さらに鶏。
手羽先、もも肉、皮、砂肝、ハツ、軟骨。ありとあらゆる部位が「食べてくれ」と輝いています。
ここでは臆することなく、あなたの欲望を解き放ってください。トリキ族はそんなあなたを歓迎してくれます。
最初に注文すると、本気で間違いじゃないかと疑います。
え、こんなにボリュームある串が二本で360円?え?なんかのドッキリ?
周りをキョロキョロしながら、誰かに「すみません、やっぱり1万円です」と言われるんじゃないかと怯えることになります。
でも違います。本当にそれだけ。しかも美味しい。
そして極めつけが、トリキ族のタレ。甘じょっぱくてトロトロで、これさえあれば世界平和が訪れるんじゃないかと思うレベル。
飲み物も最強です。
心をえぐるほど冷えたビール、魔法使いが作ったとしか思えないハイボール。
全部360円。あなたの財布は混乱しながら涙を流し始めますが、その涙もまた美味しいでしょう。
ちなみに鶏以外もあります。
アスパラのベーコン巻き、ご飯もの、チーズインコロッケ、謎にうまいポテトフライ。
高級ではないけど、これこそが「楽しいごはん」ってやつです。
店内の雰囲気は、もうコント。
「かんぱーい!」の嵐、スーツが溶けかかっているサラリーマン、ソースまみれの観光客。
みんな笑って、叫んで、何の意味もない乾杯を繰り返します。
注文も楽しいです。今はタッチパネル式の店も多いので、酔っ払った状態でポチポチ押してるだけで、気づいたら小さな鶏農場を開設していることもあります。
それがまた最高に楽しい。
注意点は、串を頼みすぎること。
「ちょっとだけ食べるつもりだったのに、なんでこんな城ができてるの!?」ってなります。
お連れ様は信頼できる人を選びましょう。
ちなみに、串界の王者をめぐる議論も白熱しています。
(個人的には、タレのもも肉串が優勝です。)
帰るころには、体から焼き鳥の香りを放ち、顔が筋肉痛になるほど笑い、
「ああ、これが人生だな」としみじみ感じることでしょう。
トリキ族は、ただの食事ではありません。
煙とタレと笑いにまみれた、ちょっと危ない最高のエンタメなのです。
悩んだら、追加で焼き鳥を頼め。それがトリキ族の鉄則です。