毎年秋になると、東京に魔法が訪れます。紅葉やパンプキンスパイスのカフェではありません。もっと深く、もっと滑らかで、インクの中に潜む魔法です。それは空気中を漂い、まるで万年筆のペン先が雲に詩を書き出しているかのよう。そう、これは「東京インターナショナルペンショー」。書くことを愛する者たち、ノートを集める者たち、手書きを神聖視する者たちが一堂に会する祭典です。
最初に気づくのは、インクで染まった手。あちこちで見かけます。真っ赤な指先、ネイビーの関節、金色のしみ。これは怪我ではありません。これは誇りです。インク試しやスウォッチカードの列に足を踏み入れれば、誰もが芸術家のように指先を染めていきます。
このペンショーは、ただ歩く場所ではありません。あなたは滑るように進みます。まるで19世紀の詩人がガチョウの羽ペンでラブレターを書いているかのように。人々はインクの流れ具合を、まるでワインのように語り合います。「このパイロット色彩雫は、梅の香りと切なさが漂うね」と誰かがつぶやけば、「いや、やっぱりダイアミン・オックスブラッドの渋みが最高だよ」と別の人が真剣な顔でペン先を嗅いでいます。
世界中から集まったベンダーたちが、小さな宝箱のようなブースを構えています。ベルベットの箱に並べられたビンテージ万年筆を展示している紳士は、もはや人間ではなく、ペンそのもののように見えるかもしれません。職人が作ったレザーのペンケースは、保険をかけたくなるほど高級。隕石から作られた50,000円の万年筆も堂々と並んでいます。
ワークショップも盛りだくさん。カッパープレート体のカリグラフィーを学べる教室から、ビーツと感動の涙からインクを作る講座まで、何でもあります。気づけばイタリック体信者の新しいカルトに入っていたとしても、きっと幸せです。
そして一番危険なのは「インクバー」。虹が爆発したかのように瓶が並び、テスター用のつけペンが用意されています。最初はただのスウォッチ、軽く試すだけのつもりが、気づけば腕にはインクの模様、財布はすっかり軽くなり、名前も不思議な「シマーリング・オーロラ・ミッドナイト」を手にしています。
人々は東京ペンショーに「行く」のではありません。「飛び込む」のです。カラフルで甘美な文房具の深淵へ。そして戻ってくる時には、荷物は重く、財布は軽く、心は白いノートのように希望で満ちているのです。
東京にいて、もしこのショーが開催されていたら、最高の万年筆と過積載寸前のトートバッグを持って出かけてください。そしてティッシュも忘れずに。あのきらめくティールのインクが乾いていく様子に、きっと涙することでしょう。