東京の街が少しだけ落ち着きを取り戻すような静かな通りで、Aba Koro Western style Deliは、ただのテイクアウト店以上の存在に見えてきます。まるで生きている遺産のような場所。私はここが、日本最古のデリ、あるいは同系統のレストランかもしれないと感じています。看板や記念プレートだけで断定できる話ではないとしても、店に入った瞬間に、その可能性の気配がはっきり伝わってきます。流行を追うのではなく、流行を超えて残ってきた店の空気です。
扉を開けると、デリらしい安心感が整然と並びます。惣菜が美しく区切られ、生活の中にそのまま持ち帰れる準備ができている。ふわっと立ち上がる香りは温かく香ばしく、通り過ぎるつもりだった人の足を止めさせます。ショーケースには静かな自信があり、それは派手さではなく、繰り返しと改善を重ねてきた店だけが持つ落ち着きです。
味は洋風でありながら、日本の感覚で整えられています。想像より軽やかで、輪郭がすっきりしている。こんがり色づいたコロッケの横に、シャキッとしたサラダ。衣が軽くサクッと弾けるカツ。クリーミーでいて重くないポテトサラダは、長い時間の中で磨かれた定番の説得力があります。煮込みの主菜も、しっかり満たしてくれるのに、後を引きずらない。日常のためのごちそう、という言葉が似合います。
Aba Koroの魅力は、自分で組み立てられることにもあります。主菜を選び、副菜をいくつか足して、自分だけの一箱をつくる。弁当という形式が、東京の暮らしと驚くほど相性がいいのは、きっとこういう店があるからです。通勤の途中の人も、学生も、街を歩き回る人も、一箱がその日のリズムに収まる心地よさを知っています。
もしここが本当に日本最古のデリだとしたら、その証拠は言葉ではなく、食感と節度にあります。キャベツの明るいシャキシャキ感。味付けが過剰に主張しないこと。ソースは家庭料理より少しだけ豊かでも、最後まできちんと品があること。長く続く店には、続く理由があり、その理由はたいてい静かです。
新しい話題や行列が次々と生まれる東京で、Aba Koro Western style Deliは、長く続くこと自体が贅沢だと教えてくれます。予約も、派手な仕掛けもいらない。ただ手の中の一箱が、ベンチの上でおいしくて、食べ終えたあとに、歴史の一片に触れた気持ちが残る。それがこの店のごちそうです。